小説を発表させていただいています。一行でも読んでいただけたら幸いですw
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亮三は少女・木ノ口伊月を、
校舎1階の職員室の2つ隣りにある
生徒指導室に連れていった。
テーブルを挟んでではなく、
テーブルの横に椅子を置き向かい合って座った。
亮三は少女に、
「君はさっき、UFOに攫われた、と言ったね」
「はい」
と少女が、亮三の目をまっすぐに見て返事をした。
躊躇いなく答える、そのひたむきで毅然とした態度に
少女の妄想か作り話ではないかと思っていた
亮三は、内心で恥じていた。
「その話を詳しく聞かせてくれたまえ」
と少女に言う。すると少女は、
「先生はわたしの話を信じてくれるんですか?
わたしは話をしても、
妄想か作り話と思われるんじゃないかと
思っていたのに…」
考えを見透かされたようで
亮三は少しどきりとしたが、
「ああ、もちろんだとも。
教師が教え子の話を信じなくて
どうするんだね」
亮三の言葉に少女は、
「よかった…」
と呟いて、その双眸にうっすらと涙を浮かべた。
(ああ、それにしても
何て美しい少女なんだ。
私などとは、人間としてのグレードが
根本的に違っているとしか言いようがない)
と亮三は思った。
「よかった。先生に相談して」
と少女は、少し笑顔になった。
すると年相応の茶目っ気のある子供の顔に見えてくる。
(泣いたカラスがもう笑った、か。
可愛いものじゃないか)
と亮三は思う。ふと少女に、
「しかし、どうして私に相談してみようと
思ったのかね?」
亮三の問いに少女は、
「先生が、疑似科学同好会の顧問をしてらっしゃる
ことを知っていたからです。
それに…」
と少女は付け加えた。
「やさしくて、真面目そうだから…」
少女の言葉に、亮三は複雑な気分になった。
(やさしくて真面目か…。
やはり私は、女性からはそのように見えるのか。
田中亮三49歳、二流四大卒、教職ひとすじ26年…。
来年銀婚式の妻と、高校受験を控えた一人息子あり。
これといった趣味も無く、酒・タバコ・ギャンブル一切やらず
家族の幸福と、生徒たちの未来のために
懸命に働いてきた。
…たしかに人畜無害の羊のような男に見えるのだろうな。
しかし、俺だってワイルドな部分が残ってるんだ。
少なくとも自分ではそう思ってる。
ワイルドな部分が……)
「先生。さっきから何をブツブツ
言ってるんです?」
と少女が尋ね、その声で亮三は我に返った。
いつの間にか独り言を口にしていたらしい。
つづく