駆け寄ってきた若い警官が言った。
「氏名は熱海由夫、年齢51歳、住所は東京、職業は釣り具メーカーの社長です」
「容疑者も釣り具絡みか!」
と梔。すでに犯人と決めつけている。
「警部、動機なども聞いておかないと…」
と七村が言う。いったん手にした拳銃をホルスターに戻して梔が、
「そうだ、動機だ。動機はなんだ」
「新製品開発のための借金を、和田に断られたようです」
「借金を断られたのか!十分すぎる動機だ!そいつが犯人だ!」
興奮していた梔が、ふと尋ねた。
「しかしお前は、平巡査なのになぜそこまで知っているんだ?」
若い警官が答えた。
「実は自分は釣りマニアでありまして、ネットで仕入れた情報から、和田と熱海の仲の悪さを以前から知っていたのであります。…実を言いますと、このフィッシングエリアにも営業シーズンは月に3〜4回は通っています」
「でかした!!犯人はどこにいる!?」
「管理事務所にいます」
「よし、いくぞ!」
駆け出す梔のあとに、七村と若い警官が続いた。
つづく