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天安文庫

小説を発表させていただいています。一行でも読んでいただけたら幸いですw

梔紫微斗(くちなししびと)の事件簿 〜ワンダートム殺人事件〜 最終回

梔たちが、フィッシングエリアの来客用駐車場の横にある管理事務所に乗り込むと、二人の男がログテーブルを挟んで丸太椅子に座っていた。
「熱海って野郎はどっちだ?」
と、釣りが趣味の若い警官に向かって梔が尋ねた。
「こちらであります」
若い警官が、テーブルの手前に腰掛けている長髪の中年男を、不躾に指差して言った。
「あんたが熱海由夫さんかね」
梔はそう言うと胸の内ポケットから警察手帳をサッと見せて、素早く仕舞った。
「釣具店店主の和田努が変死した件であんたに聞きたいことがある。一緒に来てもらうよ」
梔の一方的な物言いに、あきれたように熱海が言った。
「来てもらうとはどういう意味ですか。任意の事情聴取ならお断りしますよ。どうしてもというなら、しかるべき令状を持ってきてください」
熱海の言葉に、梔の顔が真っ赤になった。恥辱のためではなく、怒りのためである。
(ああ、また警部がエキサイトし始めたぞ。拳銃を振り回さなきゃいいが)
と、内心でつぶやきながら七村は危惧した。

その時、立ち上がった熱海とログチェアーのわずかな隙間に、一人の制服警官がすっと割り込んだ。驚く熱海に触れるか触れないかというぎりぎりの所で立ちはだかっている。
「なっ、何ですか、あんたは!?」
熱海の抗議が終わるより早く、さらに彼の右横、左横、そして背後にそれぞれ制服警官が同じ程の接近距離を保って立っていた。熱海の前、両脇、背後が制服警官によって塞がれた。
いわゆる“公妨四方固め”である。
「うまいぞ!
公妨四天王!」
と梔が声をかけた。そう、彼ら4人こそは、静岡県警・東富士署の
公妨四天王と呼ばれる、若手警官の選鋭たちであった。
「ちょ、ちょっと、あんたくっつきすぎですよ…」
熱海が右横の警官に右手を軽く触れた時、
「ウワーーーーーッ!!」
と大げさに叫びながら、その警官が吹っ飛んで行った。
「貴様ッ!!警官を突き飛ばしたな。公務執行妨害の現行犯で逮捕するッ!!」
梔はつかつかと熱海に歩み寄り、手錠の片方の輪を彼の右手にガチャリと嵌めた。もう一方の輪は自分の右手に嵌める。
「さあ、これでもう逃げられんぞ。一緒に来てもらう」
「ムチャクチャだ!人権蹂躙だ!冤罪だ!」
わめき立てる熱海を引きずるように歩かせながら、梔は管理事務所の外に出て行った。
「やれやれ。結局いつものパターンか」
と七村は、熱海を連行する梔の後姿をながめながらため息をついた。

                  おわり
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